「もう一緒にあそばないっ!」

 三年生のアキちゃんは、同じ年のユメちゃんとマリちゃんといつも3人で遊んでいました。
 ところがある日、アキちゃんが階段で座り込んでいました。声をかけると、悲しそうな顔でアキちゃんが言います。
「ユメとマリに、一緒にあそびたくないって言われた」
 私は「それは寂しいね」と言い、二人で遊ぶユメちゃんとマリちゃんに話を聞いてみました。
 ユメちゃんは「だってさあ、やなんだもん」と。マリちゃんは「やなこと言ってくるもんね」と。
「やなことなんて言ってない」とアキちゃん。「なんて?」と私。
「かわいくないって言った。キーホルダーとか、人形とか。いつもだもんね」「うん、そうそう」ユメちゃんとマリちゃんは、口を尖らせてそう言いました。
「だって・・・かわいくないと思ったんだもん」とアキちゃんは悲しそうな顔をしてうつむいてしまいました。
 かわいい、うれしい、楽しい・・・子どもたちは共感して、心を通わせます。それはとっても大切なことです。一方で、自分の心のままに言葉を発することだって、素敵なことだと私は思います。どちらの言い分もよくわかる。
「そうか。ユメちゃんもマリちゃんも、自分がかわいいと思ったものを、かわいくないって言われてさみしかったんだ」
「そうそう」と二人。
「アキちゃんは、自分が思ったことを言っただけなのに、遊ばないって言われてさみしかったんだ」
「うん・・・」
「なるほど。わかった。三人とも、わかりやすい説明だったよ。ありがとう」
「え?おわり?」と三人。
「え?みんな自分の気持ちに正直で、いいことだなって思ったよ」と少しとぼけたように私は答えました。それぞれの気持ちは言葉にすることで理解できたように感じます。相手の気持ちを正しく理解すれば、子どもたちはそれぞれ自らの力で自らの方法で解決へとたどり着くことができると私は思います。
「ねえ、一緒に遊んでもいい?」アキちゃんは二人にたずねました。「かわいくないって言わない?」と二人。「もう言わないよ!」とアキちゃん。
「思ったら言ってもいいんじゃない?」と改めて言う私を尻目に、三人はいつものように遊び始めたのでした。
 時として、子どもたちの価値観がぶつかる時があります。そういう時は、お互いの気持ちを言葉にするだけで、不思議と許し合えたりします。
 大切なのは、遊びたいと思える相手がいること。遊びたいと思ってくれる相手がいることですね。
 

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