「今日めっちゃ楽しかった!」
あさがお学童には、その子がやりたいことにとことん付き合う日があります。[ショウタの日][ユウミの日]と言った具合です。どの子にもスポットライトが当たる生活を目指して生まれた取り組みです。
どんなものか、いくつか紹介します。
[ヨシオの日]
ヨシオくんは、テレビで観たハンターから芸能人の皆さんが逃げる番組が、とっても好きでした。
「おれの日、アレやりたい!」
私は一緒に100円均一に行って、サングラスを購入します。ヨシオくんもハンターをするのかと思っていたら、違いました。
「指導員がハンターやってね」
私は覚悟を決めました。ヨシオくんのイメージに応えるには、無表情で、無尽蔵のスタミナを持つハンターになりきらなくてはなりません。いつもの公園の鬼ごっこのように「ちょっと疲れたから休ませて〜」なんて言ってはならないのです。
当日、公園で[ヨシオの日]は開催されました。20人くらいの子どもたちが参加して、地域の子も「いれてー」と入ってきました。ヨシオくんと一緒に考えたミッションもあって、大盛り上がり。途中で体力の限界が来た私の代わりに「しょうがないなー」と6年生のオサムくんたちがハンターをやってくれました。本当ありがとう。
公園からの帰り道、「今日すっごい楽しかった!」とヨシオくんは笑いました。「おれも!ヨシオありがとう!」ハンター役を買って出てくれたオサムくんたちも言いました。
「でも、指導員はもう少し体力をつけたほうがいいわ!」
夕焼けに照らされたヨシオくんたちの笑顔が、目に沁みました。
[ケイの日]
ケイちゃんは、普段のんびり本を読んでいることが多い子でした。やりたいことを自分からは言い出しにくいかも、と思い、私は声をかけました。
「ケイちゃんの日やろうよ。やりたいこととかある?」「えー、うちの日ー?」
編み物とか、お絵描き大会とか、私はいくつかの選択肢も準備していました。でもケイちゃんは、ニヤッと笑って答えました。
「おっきいゼリーがつくりたい」
今までにない、それでいてとても楽しそうなアイデアでした。
すぐに私とケイちゃんは、ゼラチンとジュース、そしてバケツを買いに行きました。
キレイに洗ったバケツにゼラチンを溶かしたジュースを流し込んでいると、なんだなんだと他の子達も近づいてきます。「これ、誰の日?」「ケイちゃんかー」「いいなー、私の日もこれにすればよかったー」皆んなの言葉を聞いて、ケイちゃんは照れくさそうです。
次の日、冷蔵庫から取り出したバケツを、大皿の上でひっくり返します。ケイちゃんも私も、小さなゼリーと同じで、プルプルと立つイメージが頭の中では出来上がっています。
ぶるん!とバケツから出てきたゼリーは、自重に耐えられず、大皿の中で崩れてしまいました。
「なんでー!おかしー!」
ケイちゃんは大笑い。周りの子も「ゼラチンが少なかったのかな?」「これ知ってる!クラッシュゼリーって言うんだよ!」と楽しそう。
みんなで、砕けたゼリーをコップにうつして食べました。「うまい!」「ケイちゃんの日最高!」
ケイちゃんは、少し誇らしげに「へへへ」と笑うのでした。